1954年から製造されたレーシングカー・Dタイプのショートノーズ版をベースに一般路上向けロードゴーイングバージョンとして製作された。エンジンやメカニズムはDタイプと全く同じだが、日常での使用を考慮しボディおよび内装に手が加えられていた。外装ではフィンと、運転席と助手席を隔てていたフレームが取り払われ、助手席側にもドアが設けられた。ただしトランクルームは設置されず、テール部分にはクロームメッキのトランクキャリアが取り付けられた。風防はフロントウインドウに取って代わられ、ソフトトップも備えた。内装は快適性を向上させるべく革張りのシートが用意された。
1957年2月12日に発生したジャガー工場の火災により、在庫も治具も消失してしまい、生産中止を余儀なくされた。そのため生産台数は16台(加えてDタイプからのコンバージョンが2台製作された)に過ぎない。そのため、現在ではクラシックジャガーの中でも最も稀少価値のある車の中の1台として知られている。
Dタイプの歴史 [編集]
- 1954年 - 発表。ル・マン24時間レースに参戦するもトラブルでリタイア。ただしユーノディエール・ストレートでの最高速を記録し、戦闘力の高さを印象付けた。
- 1955年 - 構造的な変更を受ける。ボディ前半部は重量と剛性の問題より、マグネシウム合金からニッケル合金になった。また、レースでの空力特性を意識してフロントオーバーハングを若干延長したロングノーズタイプが作成された。テール部のフィンの形状も見直された。エンジンもヘッド、給排気マニフォールドに変更を受け、出力が向上し、この年のル・マン24時間レースにて優勝した。
- 1956年 - エンジンがルーカス製インジェクションを備えたものに変更される。足回りにアンチロールバーが追加されたり、ボディーが軽量化されたりと、さらに戦闘力を引き上げる変更が行われる。またこの年の暮れにXJSSの生産が開始される。ル・マン24時間レース2年連続優勝。
- 1957年 - ジャガー社のコヴェントリー工場を襲った火事により、生産中のDタイプ、XJSSとともに治具がすべて焼失。生産続行不可能となり、生産が終了する。しかしル・マン24時間レースへの出場は果たし、3年連続優勝を手中にした。