フォルクス・ワーゲンは ここ一週間、前代未聞のひどい状況に陥っている。
事の発端は 米 West Virginia 大学(WVU)の ある調査からだった。
ヨーロッ車の環境性能の優秀さを確認すべく、某NPO の依頼で、BMW X5、ジェッタ、パサートを
路上走行させることにより、実態に則したデータの収集を試みたところ、開けてビックリ、
VW2車のNOx が基準値の20~35倍に達したとの結果を得てしまった。
WVU が昨年5月に これを公表したことで、米環境保護局(EPA)も独自の調査を開始、
これに基づいて VW を追求した。
VW は EPA に対し "釈明"(言い逃れ)を繰り返したが、EPA が米国内での型式承認を保留する
旨を伝えたところ、検査の際にだけ 排ガスが規定値内に収まる様なソフトを搭載していたことを
(苦し紛れに)認めたものだ。
これ等は本来、米国内での問題として 対象車種は50万台規模と言われていたが、
その後 VW は、不正ソフトを搭載した車は 2008年から2016年までに販売した中で、
全世界で1100万台を超えると公表した。 尚、これに該当する車種と型式の詳細については
未だ正確な内容は発表されてない。
アメリカ当局は この顛末を刑事事件として受け止め、捜査を開始したと伝えられる。
この結果次第では、EPA は 最大 約180億ドル(2兆1600億円超)の制裁金の支払いを
VW に求めるとし、米国内では 今のところ Golf、Passat、Beetle、Jetta、
また VWグループのAudi A3 が対象となるという。
さらに ドイツを含む ヨーロッパのほぼ全域でも、対象車種は相当な数に上る模様だ。
VW 側も、米国内を含む世界的に対象となる車輛の "不正ソフト" の改修費用として、
65億ユーロを計上すると発表、ドイツの運輸当局も厳密な再検査を行うとした。
Passat が該当する下記のオフィシャル・サイトは、現在消去されたままだ。
これ等の現状を鑑み、Volkswagen AG のCEO・Martin Winterkorn は、
23日、彼自らの決断で 辞任を表明した。
Winterkorn の後任には、VW 傘下の Porsche の CEO・Matthias Muller が、
VW Group の新たな CEO として着任することに為った。
尚、Muller の後任、ポルシェの新社長には、Oliver Blume が就く。
以下の写真は、この3月に Jeneva(ジュネーブ)Motorshow のプレスデーの前日、
同じ会場内で開かれた "Europa Car of The Year" の現場で、私が撮影したものだ。
VW Passat がその栄誉に輝いた瞬間、Winterkorn は 私の目の前で 満面の笑みを浮べながら
会場の聴衆に応じ、記者やカメラマンの取材の列に答えた。
しかし、その僅か半年後に この事態だ。
5年以上前に蒔かれた不吉な種は、この時 芽を出して 間もなく花開こうとしていたのだ。
私だって これを観ながら、彼が まさか失脚するなんて 想いもよらなかった。
世の中の災いは いつ、どこから降りかかるか解からない。
Click to enlarge as follows ↓
Winterkorn in this Geneva
Clean Diesel !?
この事態を収束させるには、相当な努力と時間が必要だ。 それは計り知れない。
巷(ちまた)の町工場がやったのとは ワケが違う。
VWの あらゆる関連事業者やユーザーに対して、降りかかる火の粉は拭い切れるものではない。
世界の自動車業界にとっても 正に青天の霹靂で、その影響は想像も及ばないものとなろう。