さて、今回は、自分にとって大事なクルマをひとつ、見逃してしまうところだった。
このブログ、15日の記事のJWA のGT40 にばかり気をとられていて、
同じモントレーの Quail Lodge で行われることになっていた Bonhams のオークションで、
もう一台のGT40、#P/1033 が出品されているのに気が付かなかったものだ。
実は、15日のブログにも、このクルマのエピソードを書いていたところだった。
何とも間抜けな話である。 [Map]
https://www.bonhams.com/auctions/20322/lot/434/
1966 Ford GT40、シャシーナンバーGT40P/1033 は、Ford 302 V8・48IDA Webers と、
やはり Gurney-Weslake のヘッドを搭載し、66年に英国 バッキンガム州 Slough の
Ford Advanced Vehicles Ltd の工場で生産され、スイスの Scuderia Fillipinetti の
レーシング・チームへと届けられた。
当初、FAV の記録によると、#1033 は ロード・カーとして出荷されたとあり、
後に レース用のエンジンとミッションに組み換えられている。
クルマは、まず スイスの Fillipinetti のもとへ送られ、翌年早々、Light Metallic Blue に
塗装して、 #1033 は 春先のジュネーブ・ショーに展示される。
67年2月号の英国 "Car" マガジンの表紙にも掲載された。
まもなく、Fillipinetti は、このクルマを For Sale とし、スイスのフェラーリ・デーラーを
通じて Ortiz-Patino に売却、氏は 5月に ジュネーブでロード・カーとして登録し、
その時のナンバーは、"GE 136999" である。 此の時はまだ、オプションだった
エアコンと電動のサイド・ウインド、フル・レザートリムの仕様で、スイスとフランスの
間を たまにドライブした程度だった。
翌68年、クルマは、フランス人のレース・ドライバー、Dominique Martin の手に渡り、
ヒルクライムや他のレース・イベントにも 積極的に参戦している。
69年には、ル・マンやモンツァ 1000、ホッケンハイム 300等の耐久レースにも出場する。
70年早々、アルゼンチン・ブエノスアイレスのレースにも遠征、そこから戻るや、
Rally de l'Ouest では 2位でフィニッシュもした。
しかし、Martin は 方向転換し、#1033 を売りに出すことにして、ノン・メタリックの
淡いブルーに塗り替えているが、クルマは その後に数奇な運命を辿ることになる。
Martin は、売却を含めて、Fillipinetti のメカニックである Michael Berney に
委託していたが、70年10月26日、彼が自宅に戻る途中に出火、
まもなく消防車も駆けつけたが、#1033 は、シャシーを残して 殆んどが
燃え尽きてしまった。
その際に、Berney は、記録を残す為に状況を写真に収め、そのコピーを
GT40 の研究家 Ronnie Spain に送付し そのシャシーが #1033 である事を
補足している。 Spain は、" これは非常に重要な事だ。" といい、
このクルマの左フロントのシャシー・タブの形跡から、これが #1033 であることを
確認できるとしている。 そして 72年に、Fillipinetti の朋友である Franco Subarro が
火災で損傷した #1033 のシャシー・タブを補修している。
しかし、その間、Subarro から 一時、イギリスのDavid Piper の手に渡る際に、
何を間違えたか、Fillipinetti が67年のモンツァで 同じく火傷した #1040 のレジストと
取り違えてしまい、Piper は、それに気付かないまま、#1033 を #1040 として
アメリカの Paul Chandler に売却した。
Ronnie Spain によれば、このときはまだ、火災で損傷したルーフのインナー・パネルと
バック・ミラーが残っていたと言う。
そして Chandler から 次の新しいオーナー、Bud Romak に #1040 のまま手渡される。
83年に、カリフォルニアの スペシャリスト、Phil Reilly が、微細に渉るレストアを行う。
Romak は しばらくの間、ビンテージ・レースを楽しんだ後、88年に売却しようとした際、
Ronnie Spain に自分のクルマの素性を確認したところ、それが #1033 であるのを
知ることになる。
次のオーナーとなった 玄人肌の Tom Armstrong は、それまでの件を承知の上で
買い受け、モントレーやSears Point、Elkhart Lake等の著名なレース・シーンで
走らせ、現在に至る。
Ronnie Spain は、現在の #1033 について、
"The One and Only genuine GT40P/1033" であると断言している。
ところで 私は、91年か92年頃のラグナ・セカのパドックで、
この #1033 のシャシー・ナンバーを実車で確認している。
その際 10分ほど話を交えたのが、件(くだ)んのTom Armstorong だったのだろう。
彼は その時に もう一台、ミントな ローラT70 を持ってきていたが、
それが彼のクルマかどうかは 聞かずじまいだった。
此の時 私は、汎用機のニコマートで、35枚撮りフィルム・2本分を使って #1033 を
撮影しているが、今は引っ越し荷物に紛れて、ここ10年ばかり 目にしていない。
フロント・フェンダー横に貼られていた Fillipinetti の楯型のステッカーは、
現在のものより ひと回り小さかった様に記憶するが、定かでない。
今回の Bonham のオークションへの出品も、彼からのオファーによるものだ。
Lot No. 434 として、17日(金) に220万5千ドルで " 誰かが " 競り落としている。
私が当時 オファーを受けた金額より 約一億円も高い金額である。
さあ、今から 10年後位には この#1033 が自分の手元に届くことであろうか !?
今はとても手の届く金額ではないから、まあ、 ....... 無理だろうな !!
でも、一応、頑張ってみるのが 筋かもしれないが。